九州大学 整形外科学教室
九州大学大学院医学研究院臨床医学部門
外科学講座整形外科学分野

研究紹介
特発性大腿骨頭壊死症研究

大腿骨頭壊死グループでは、原因不明の難病疾患である大腿骨頭壊死症の病態解明や予防法の開発を目指した基礎的な研究から、手術治療成績の向上を目的とした臨床的な研究まで、多面的なアプローチで研究を行なっています。また、大腿骨頭壊死症と同じように骨頭が圧潰する大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折やペルテス病などもその研究対象としています。

今年度4月から大学院生が1名加わり、教官3名(本村、池村、山口)、大学院生5名(河野紘一郎、末次弘征(理化学研究所)、徐明剑、山本典子、田中秀直)で引き続き精力的に研究を行っております。

以下に研究内容を一部ご紹介させていただきます。

 

・ 大腿骨頭壊死症の発生予防に関する臨床研究(先進医療)

これまでの基礎研究結果を元にして、ステロイド治療に伴う大腿骨頭壊死の発生予防の臨床研究を“先進医療”で行っています。これは、全身性エリテマトーデス(SLE)の初回ステロイド治療と同時に試験薬3剤(抗血小板薬、高脂血症治療剤、ビタミンE)を90日間併用投与し、180日後の大腿骨頭壊死発生の有無を評価する全国多施設共同試験で、世界初の予防法開発を目指しています。

 

・ 大腿骨頭壊死症の病態解明研究

1. 圧潰メカニズムの解明 1-3)

大腿骨頭壊死症は骨頭が圧潰(陥没)してはじめて疼痛が出現しますが、未だ圧潰の詳細なメカニズムはわかっていません。私たちは、壊死域と健常域の境界に応力が集中することが圧潰発生に重要であるという観点の元、研究を進めています(図1)。

1) Baba S, Motomura G, Ikemura S, et al . J Orhop Res. in press.

2) Utsunomiya T, Motomura G, Ikemura S, et al. J Orthop Res. 2018.

3) Karasuyama K, Yamamoto T, Motomura G, et al. Bone. 2015.

 

図1 未圧潰骨頭におけるFEM解析により関節面に応力集中を認める(左図)。圧潰後の骨頭標本にて、応力集中部での骨折を認める(右図)

 

2. 圧潰前後の病態解析 4-7)

圧潰の予防を考える上でも、圧潰前後の病態解析は重要です。我々は、圧潰前の無症状時期に撮影されたMRI画像や、圧潰後に摘出された骨頭のマイクロCT像などを駆使して研究を進めています。

4) Baba S, Motomura G, Ikemura S, et al. Joint Bone Spine. 2020.

5) Hatanaka H, Motomura G, Ikemura S, et al. Eur J Radiol. 2019.

6) Hatanaka H, Motomura G, Ikemura S, et al. Skeletal Radiol. 2019.

7) Kubo Y, Motomura G, Ikemura S, et al. Int Orthop. 2018.

 

骨切り手術の成績向上・標準化を目指す研究 8-12)

杉岡先生が開発された大腿骨頭回転骨切り術は、現在では大腿骨頭壊死症のほか若年性の大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折症例にも適応し、良好な成績を報告しています。3Dシュミレーションモデルの利用(図2)により、術前計画は精密に行えるようになりましたが、今後はいかにして計画通りに手術を行えるかを突き詰めていきたいと考えています。

8) Motomura G, Yamamoto T, Kubo Y, et al. Surg Technol Int. 2020.

9) Kubo Y, Motomura G, Ikemura S, et al. J Orthop Sci. 2020.

10) Kawano K, Motomura G, Ikemura S, et al. Mod Rheumatol. 2020.

11) Sonoda K, Motomura G, Ikemura S, et al. JBJS OA. 2017.

12) Sonoda K, Motomura G, Ikemura S, et al. Orthop Traumatol Surg Res. 2017.

図2 大腿骨頭回転骨切り術の3Dシュミレーション

 

・ 大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折の病態解明研究 13-15)

大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折は、大腿骨頭壊死症と類似した圧潰像を呈しますが、そのメカニズムはまるで異なると考えています。臨床画像や臨床サンプルを用いて病態解析を行なっています。

13) Kubo Y, Motomura G, Utsunomiya T, et al. AJR Am J Roentgenol. in press.

14) Kubo Y, Motomura G, Ikemura S, et al. J Orthop Res. 2018

15) Sonoda K, Yamamoto T, Motomura G, et al. Skeletal Radiol. 2016

 

九大整形の大腿骨頭壊死グループが世界の骨壊死研究をリードできるよう、一人一人が精進して参ります。今後ともご指導ご鞭撻のほど何卒よろしくお願い致します。

 

文責:本村悟朗