九州大学 整形外科学教室
九州大学大学院医学研究院臨床医学部門
外科学講座整形外科学分野

研究紹介
バイオメカニクス(膝関節)

バイオメカニクスグループ(膝関節)は、①イメージマッチング法を用いた膝関節動態解析、②高位脛骨骨切り術の術前計画、③軟骨変性の質的・量的評価などの研究を、膝関節班の教員(濵井 敏、赤崎幸穂、津嶋秀俊、川原慎也)と大学院生(原田 知、原田哲誠、國分康彦、リハ藤田努)で行っています。
 

①イメージマッチング法を用いた膝関節動態解析

九州産業大学生命科学部日垣秀彦教授との共同研究で、膝関節の三次元動態解析を行っています。イメージマッチング法は、図のように連続X線画像に大腿骨コンポーネントの三次元モデルの投影像をマッチングしたものです。本法により、生体内に挿入された人工関節が、日常動作の中でどのような動態を示すのかを明らかにすることが出来ます。手術手技や機種の違いが膝関節の動態にどのような影響を及ぼすのかを、Journey II BCSやPFC sigma mobile bearing、Attuneなど、デザインに特徴のある機種を用いて検討しています。また人工膝関節だけでなく、健常膝関節や変形性関節症のスクワットや歩行における動態の違いなども解析し報告しています (Hamai et al: J Appl Biomech 2016, Murakami et al: Knee 2016, AOTS 2017, KSSTA 2018, Int Orthop 2018, J Orthop 2018, Kiyohara et al: J Orthop 2020)。

 

 
 

②高位脛骨骨切り術の術前計画

高位脛骨骨切り術(HTO)では、立位におけるjoint line convergence angle(JLCA)は術前後で変化する症例を認め、術前立位で計画した矯正角ではover-correctionとなることがあります。術前の立位もしくは仰臥位におけるJLCAは、膝内反モーメントや膝周囲laxityなどの複数因子が影響し、それらの程度は症例によって様々です。本研究では、術前立位時の膝内反モーメントを減じる効果を期待した20°外側楔状足底板を使用することによって、HTO後の立位JLCAを症例ごとに術前予測可能であること・術前計画における矯正角度の決定に有用であることを報告しました。(Akasaki et al: KSSTA 2019)

 

変形性関節症や関節リウマチなどの関節炎における軟骨変性を質的、定量的に評価する方法として、MRIのT1ρmapping法に注目しております。2012年に、当院放射線科とともに軟骨変性におけるT1ρmapping法の妥当性について報告いたしました。(Tsushima H, Rheumatol Int. 2012)。その後も、膝グループでは、前十字靭帯損傷による軟骨変性の部位(Oosaki K, OJSM. 2015)と靭帯再建術後2年での比較(UshioT, KSSTA. 2019)や、後十字靭帯損傷や半月板損傷に伴う軟骨変性の評価(Okazaki K, KSSTA. 2014, Matsubara H, BMC Musculoskeletal Disorders. 2015) を行い、T1ρmapping法を用いることで、その病態に関して理解を深めてきました。そして、引き続きT1ρmapping法を用いた研究をいくつか進めています。近年、軽度~中等度のOA症例に対してはOpen Wedge High Tibial Osteotomy(OWHTO)は有効な治療法であり、増加傾向にあります。一方で、膝蓋骨低位、PF接触圧の上昇から、PF関節軟骨変性の進行といったnegative effectも考えられています。その変性具合に関しては、関節鏡での肉眼的評価が主流ですが、やや主観的といえます。そこで、T1ρmapping法によって、OWHTOにおけるPF関節軟骨変性の程度や、脛骨粗面遠位へ切り下げる骨切り方法(OWDTO)では、そのPF関節変性を予防できるかといったことなどを定量的に評価したいと考えています。
[文責 膝関節グループ]