九州大学 整形外科学教室
九州大学大学院医学研究院臨床医学部門
外科学講座整形外科学分野

専門グループ紹介
股関節グループ

股関節診療は中島康晴教授、本村悟朗准教授、濵井 敏准教授、池村 聡講師、川原慎也助教、佐藤太志助教、山口亮介助教、原大介助教の8名で担当しております。

 

 

股関節について
股関節は脚の付け根にある、体の中で最も大きな関節です。体を支えながら歩くという人間にとって、大変重要な働きをしています。股関節は、大腿骨の先にある丸い骨頭が骨盤のくぼみ(寛骨臼)にはまっている構造をしています(図1)。骨頭と寛骨臼にはそれぞれ滑らかな軟骨が覆っており、関節がスムーズに動けるようになっています。股関節の病気ではこれらの骨や軟骨などが障害され、強い痛みを起こします。その結果、歩行困難など日常生活に多大な支障をきたすようになります。また、痛みだけではなく、関節自体が変形していくため、何らかの手術を要することが多い関節です。

 

   図1

 

それでは代表的な股関節の病気と、当科で行っている治療について説明します。

 

変形性股関節症

いわゆる“軟骨がすり減ってしまう”病気で、その“きっかけ”はいろいろとありますが、ここでは最も多い寛骨臼形成不全症に伴う変形性股関節症について説明します。寛骨臼は先に説明しましたように骨頭がはまっているくぼみですが、寛骨臼形成不全症では寛骨臼が骨頭を十分に覆えていないため、徐々に軟骨が障害されてしまいます。X線では、進行に伴い関節の隙間が狭くなり、軟骨がすり減っていることがわかります (図2)。

図2 寛骨臼形成不全症に伴う変形性股関節症のX線変化

 

変形性股関節症に対する治療
もともとの股関節の形態に原因があり、軟骨が障害され関節が進行性に変形する病気ですので、どの段階にあっても根本的に解決するためには手術が必要となります。手術の方法については、なるべく患者さんの生来持っている、生きた関節をうまく働けるようにする方法が最も良いと思っています(関節温存手術)。しかしながら、関節がとても悪くなっている(関節の隙間が減っている)場合には人工股関節全置換術の適応となります。両者は入院期間やリハビリも異なりますので、年齢やお仕事などを考慮した上で、患者さまと相談しながら方法を決めていきます。

 

  • ・ 寛骨臼移動術(図3)

寛骨臼形成不全症に対する代表的な関節温存手術です。原法は1969年に当科の第4代教授になられた西尾篤人先生が1956年に世界で初めて報告された骨盤骨切り術で、以後術式の改良を重ね、現在は年間30~40例程度行っています。

※年齢および関節症の進行状況によって適応が決まりますので、手術のタイミングがとても大事です。つまり、いつでも(5年後でも10年後でも)できる手術ではありません。寛骨臼形成不全症は若い女性に比較的多く見られますが、結婚や妊娠・出産によってタイミングを逃してしまう方が多いです。関節を温存するタイミングを失うと、若くして人工関節以外の選択がなくなってしまいます。若い女性で股関節に持続する痛みを自覚される方は、早期の専門医の受診を強くお勧めします。

     図3 寛骨臼形成不全症に対する寛骨臼移動術

 

・人工股関節全置換術(図4)

変形性股関節症に対する代表的な手術です。寛骨臼移動術とは異なり、どのような変形にも対応できます。日本では年々手術件数が増加している手術で、当科では年間200例以上の人工関節関連の手術を行っています。

人工股関節全置換術は、痛みのない動く関節を再建でき、早期の社会復帰が可能となります。人工関節では長期の耐用性が心配されますが、インプラントの進歩により大きく改善しました。そのため、人工股関節全置換術の対象患者は関節温存先進国である日本においても若年齢化しています。また、人工関節の最大の弱点は脱臼しうるところですが、こちらも手術法の改良やインプラントの進歩により脱臼しにくくなっており、当科では1%を切るところまで改善しています。

※人工股関節全置換術は関節温存手術とは異なり関節変形が進行しても手術は可能ですが、まったくタイミングがないわけではありません。あまり家から外出しないなど、活動を抑えることでいたずらに手術を先延ばししていると、いざ手術を受ける時には筋力がかなり落ちてしまっており、術後思うようにリハビリが進まない事があります。 “痛みのせいで”やりたい事ややらなければならない事が出来なくなってくるようであれば、あまり我慢しない事をお勧めします。

図4 変形性股関節症に対する人工股関節全置換術

 

 

大腿骨頭壊死症

大腿骨頭の一部(またはほとんど)が虚血により死んでしまう病気で、骨頭が陥没して痛みが起きます(図5)。原因は不明ですが、何らかの病気に対するステロイド治療やアルコール多飲と関連があるものがあります。30~50代の、いわゆる働き盛りの世代に起こることが多く、しかも日常生活に多大な支障をきたしますので、国が難病に指定している疾患の一つとなっています。

図5 大腿骨頭壊死症 骨頭が陥没して痛みが起きます

 

大腿骨頭壊死症に対する治療

変形性股関節症と同様に、痛みのために日常生活に支障をきたすことが多く、根本的な解決を図るためには手術が必要です。2010年から2015年の間に当科を初診された患者さまの中で、1年以上手術を行わずに経過を見られた方はおよそ15%で、その約半数は2年以内に手術を選択されていました。薬やリハビリなどの保存的治療では痛みのコントロールが難しいことを示していると思います。

当科で行っている手術は大きく二つに分けられます。一つは関節を温存する手術で、当科では骨切り手術を行っています。もう一つは人工物に置換する手術で、人工股関節全置換術と人工骨頭置換術を行っています。これらの手術適応の有無は、壊死の大きさや場所(骨頭のどこに壊死があるか)、関節変形の有無、年齢等で決まります。また、それぞれ入院期間やリハビリの方法も異なりますので、お仕事や家庭環境等も考慮して、患者さまと相談しながら治療法を決めています。

ここでは当科で行っている代表的な関節温存手術である大腿骨頭回転骨切り術についてご紹介いたします。

 

・ 大腿骨頭回転骨切り術(図6)

1972年に当科の杉岡洋一名誉教授によって開発された関節温存手術で、”Sugioka’s osteotomy”として世界的に有名な手術法です。これは、骨頭の一部が壊死して陥没している場合、骨切りして骨頭を回転することにより陥没している部分を荷重部(体重がかかるところ)から逃し、陥没のない健常な部分を荷重部に移動させる手術です。荷重から逃れることにより壊死した骨の修復(再生)が期待され、壊死の存在しない股関節を再獲得できる可能性があります。簡単な手術ではありませんが、適切な手術適応、正確な手術手技、および適切なリハビリによって、長期的に関節温存が図れることが期待され、当科では年間10~20例程度行っています。

※関節温存手術ですので、手術のタイミングがとても大切です。いつでもできる手術ではありませんので、適応があってご希望される場合にはできるだけ早期の手術が望ましいと考えています。

 


図6 大腿骨頭壊死症に対する大腿骨頭回転骨切り術

 

 

 

  • 当科を受診される患者さまへ

ここまで主な股関節の病気・治療について簡単に紹介しましたが、これ以外にも股関節の病気や治療法はあります。診察を受けられる際には経験豊富な担当医が詳しくご説明します。

九州大学整形外科ではこれまでに多くの股関節の患者さまを治療してきました。これはわたしたちの財産であり、行ってきた治療法の検証を重ねることで、より良い治療法を提供できるよう努めています。どうぞ、ご安心して受診されてください。

 

(文責:本村悟朗)