九州大学 整形外科学教室
九州大学大学院医学研究院臨床医学部門
外科学講座整形外科学分野

研究紹介
軟骨研究

赤崎幸穂(講師)、津嶋秀俊(助教)、大学院生4名(桑原正成、内田泰輔、筒井知明、谷口良太)は、変形性関節症や関節リウマチなどの関節炎の病態・治療薬開発および軟骨分化・再生における分子メカニズムの解析をテーマに研究を行っています。

軟骨変性過程では、IL-1βなどの炎症性サイトカインや変性した糖蛋白などが、軟骨細胞や滑膜細胞の受容体を刺激し、MMPに代表される軟骨分解酵素の過剰発現などの関節内恒常性に悪影響を与える現象が起こります。軟骨分化過程では、間葉系幹細胞におけるSOX9をマスター遺伝子とした、Ⅱ型コラーゲンやアグリカンなどの軟骨特異的因子の発現亢進によって軟骨細胞への分化が促進されます。

 

変形性関節症ではさらに加齢因子が深く関与しており、軟骨基質や軟骨細胞そのものの性質も変化していきます。最近は、変形性関節症の発症・進行の病態における特異的な新規因子を見つけ出すことに重点を置いています。ヒトの新鮮軟骨組織より直接抽出したRNAのシークエンスデータを共同研究先であるスクリップス研究所より共有させてもらっています。そのため、ヒト変形性関節症軟骨に特徴的な数百の遺伝子を把握することができ、有望な因子をヒト軟骨組織サンプルで検証した後に分子レベルの解析へと広げるシステムを構築しました。

 

その中で、G protein-coupled receptor kinase 5 (GRK5)について有望な結果を得たため、論文発表を行いました(Sueishi T et al. Arthritis and Rheumatology 2020)。GRK5は、Gタンパク質共役受容体をリン酸化し、脱感作するキナーゼである一方、多数の細胞内タンパク質と相互作用して、細胞内シグナル伝達系の情報集積部位としての役割も推測されています。GRK5はヒトOA軟骨で高発現しています。

 

 

治療につなげる試みとして、GRK5阻害薬であり、既存薬であるAmlexanoxを使用したOAの疾患修飾治療薬の開発を進めています(特許出願済)。マウスにおけるOA抑制効果は確認しており、大型動物における非臨床試験を経て、臨床応用を目標にしています。

 

軟骨分化に関する業績として、長寿遺伝子として知られるForkhead box O (FOXO)転写因子が、TGFβ1シグナルによる軟骨分化において、SOX9の発現に加え、細胞周期停止を制御し、軟骨分化に必須の転写因子であることを報告しました(Kurakazu et al. Journal of biological chemistry 2019)。マウスATDC5細胞株、マウス肢芽由来間葉系細胞、ヒト間葉系幹細胞を用いて、TGFβ1/SMADシグナルがFOXO1の発現および活性を促進することを明らかにしました。

 

(文責:赤崎幸穂)