九州大学 整形外科学教室
九州大学大学院医学研究院臨床医学部門
外科学講座整形外科学分野

留学だより
スタンフォード留学を振り返って

Department of Orthopaedic Surgery, Stanford University

河野裕介

 

2017年4月~2019年3月の2年間、スタンフォード大学に留学する機会を頂きました。臨床に復帰して慌ただしい毎日を過ごす今、あの夢のような2年間は遥か昔のような気がしますが、この機会に振り返ってみたいと思います。

 

スタンフォード周辺の生活環境

スタンフォード大学はサンフランシスコ国際空港から南東に車で約30分という位置にあります。1891年に設立された私立大学で、Leland Stanfordが早逝した息子の名を残すために設立したと言われています(スタンフォード大学の正式名称はLeland Stanford Junior University)。いわゆるシリコンバレーと呼ばれる地域に属していて治安もよく生活水準も高いのですが、その分物価も高く、家賃も年々高騰しています(1ベッドルームで約$3,000!)。幸い給料はもらえていたものの、家計にはそれなりのダメージがありました…

ここの素晴らしい点として特筆すべきは快適な気候です。4月から10月くらいまでは、ほぼ毎日快晴で、雨は一滴も降りません。雲一つないカリフォルニアの青い空、なにかこれだけでも贅沢な気分に浸れます。この辺りの平均気温は夏でも26~27℃、30℃を超えることも時々あって日差しの強さは感じますが、日本のように湿気がなく、外を歩いていてもTシャツが体にへばりつくような不快さは全くありません。また、1日の気温差が大きく、夜は夏でも15℃前後まで涼しくなるので、クーラーはほとんど必要ありませんでした。

 

The Oval @Stanford University

 

また、アメリカはペットフレンドリーな国です。家族4人(?)(妻、当時4ヶ月の娘、1歳のチワワ)で渡米しましたが、ペットのいる我が家にとってはある意味日本より過ごしやすかったかもしれません。スーパーにも入れますし、レストランもテラス席があり一緒に入れる店がいくつもありました。飛行機はキャビンに連れて入れますし、ペットOKのホテルも多いので、家族で色々な場所を旅行できたのもいい思い出です。

 

Trader Joe’sでの買い物を楽しむ我が家の愛犬

 

Morning Glory Pool @Yellowstoneの雰囲気を楽しむ我が家の愛犬

 

ベイエリア日本人整形外科の会

UCSF・スタンフォードに留学中、もしくは臨床に従事する整形外科医が、整形外科の国際交流の推進に寄与することを目的に2012年に発足しました。勉強会で研究の成果を報告したり、時々家族を含めたBBQをしたりで1~2ヶ月に1度くらいのペースで集まっています。九大からの留学生も大変お世話になっているこの会の会長である長尾正人先生が札幌医大から渡米されておよそ20年、2018年7月にUCSF整形外科の教授に就任されました。長尾先生は留学生の父のような存在であり、我々留学生をサポートしてくださっています。また、日本人のUSCFへの留学や見学などもコーディネートしており、日米の懸け橋ともなられています。在米中のメンバーと帰国したメンバーを合わせると40名以上になり、医局の垣根を越えてたくさんの先生とこの会を通じて知り合うことができました。これも留学で得ることのできる財産の一つです。

 

ベイエリア整形外科の会にて(前列中央が長尾先生)

 

Goodman Labでの骨再生医療研究

Stuart Goodman教授の研究室にポスドクとして所属していました。Dr. GoodmanはAdult reconstruction(hip and knee)が専門であり、多忙な臨床の傍ら、基礎研究の指導も行っておられます。グッドマンラボのメインテーマは‟Bone regeneration”であり、MSC(間葉系幹細胞)にTissue engineering技術を組み合わせ、様々なアプローチで骨再生治療の研究を行っています。例えば、グッドマンラボで確立したPrecondition MSC、Genetically modified IL-4 secreting MSCを用いて、人工関節のosteolysisに対する治療・予防を目指したosteogenesis促進のin vitro, in vivo study、Bone marrow concentrateによるosteogenesisの研究、MSCと3D scaffoldを組み合わせて用いるBone defect treatmentの研究などを行いました。また、MSCによる細胞治療は、そのimmunomodulation能力によってosteolysisを含め、広く慢性炎症を伴う疾患を改善する治療としても有効である可能性を秘めています。実際、内科系ラボと糖尿病治療のコラボレーション研究も進んでいます。大学院時代の研究とは畑違いで苦しい思いもしましたが、Dr. Goodmanという尊敬できる上司(名前の通り、本当にいい人です!)、頼れる仲間達と仕事ができたのは幸運なことでした。

 

ORS 2018 @New Orleans(右端がDr. Goodman、左端が筆者)

 

ラボのメンバーと一緒に

 

最後に

入局して臨床をしている時には留学など考えたこともなかったのですが、縁あってスタンフォードで2年間過ごすチャンスをいただき、何か人生におけるプラスアルファをもらえた様に感じています。出発前に「留学は人生のハイライトになる」ということを聞きました。出発当時は楽観的にそうであることを期待するしかできませんでしたが、今は確信をもってそうだと言えます。九大からスタンフォードへの留学生は私で13代目ですが、この気候・研究環境含め恵まれた場所で仕事をすることができたのは、教室の諸先輩方がつないでくれたスタンフォードとの絆のおかげです。この場をお借りして感謝申し上げます。この貴重な経験を何らかの形で還元できればと思います。最後に、スタンフォード留学の機会を与えていただきました中島康晴教授、留学に背中を押していただいた同門の先生方に心より御礼申し上げます。