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原発性悪性脊椎脊髄腫瘍に対するセパレーションサージェリー

准教授 松本嘉寛

 九州大学整形外科では、脊柱管内病変を伴う原発性悪性脊椎脊髄腫瘍(primary malignant spine/spinal tumor; PMST)に対して、脊柱管内腫瘍のみ切除する方法(separation surgery; SS)と重粒子線治療(carbon-ion radiotherapy; CIRT)を組み合わせた新規治療法(CIRT-SS)を世界に先駆けて行っております。

原発性脊椎脊髄腫瘍は、神経組織や大血管など重要臓器との関係から根治的切除が不能な場合が多くみられます。しかし、原発性脊椎脊髄腫瘍の予後を規定する最も重要な因子は、一塊(en bloc)での全摘出であり、en bloc切除が不可能な頸椎部や仙骨・骨盤発生の原発性脊椎脊髄腫瘍の手術による治療成績は良くありませんでした。そのため、原発性脊椎脊髄腫瘍は整形外科疾患の中で、最も治療困難な領域のひとつであると考えられています。

原発性脊椎脊髄腫瘍の組織型の多くは放射線抵抗性であるため、重粒子線治療(CIRT)が行われてきましたが、脊髄近傍の腫瘍に対する重粒子線治療は不可逆的な四肢麻痺、対麻痺を生じる放射線脊髄炎が発生するリスクがあります。そのため、脊髄近傍では照射線量を抑える必要があり、そのために脊髄近傍の照射野辺縁の再発が多くみられます。このように腫瘍の脊柱管内進展による硬膜の圧迫を伴う症例の重粒子線による治療においては、安全性と有効性の両立が困難である場合が多く、何らかのブレークスルーが求められていました。

そこで、原発性脊椎脊髄腫瘍のうち腫瘍の脊柱管内進展による硬膜の圧迫を伴う症例に対して、硬膜を圧迫している部位のみ、腫瘍を部分的に手術にて切除することで腫瘍と脊髄の間にスペースを確保(separation)することで、脊髄から離れた残存腫瘍に対して十分な線量を照射することが可能となりました(図1)。このseparation surgeryと重粒子線治療を組み合わせた治療は、放射線脊髄炎を避けながら、重粒子線治療にて根治を目指すことが可能となり、原発性脊椎脊髄腫瘍に対する画期的な治療法となることが期待されております。

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