
交通事故、高所からの墜落、労働災害などの大きなエネルギーが体幹・四肢・関節に加わることで生じる、脊椎や骨盤などの体幹部の骨折、軟部組織の破綻を伴う開放骨折、転位や粉砕の強い関節内骨折など、治療方針の決定が難しい外傷や手術の難易度が高い骨折に対処しています。
骨盤骨折:
体幹を支える要となる骨盤が強いエネルギーにより、骨や靭帯成分が破綻することで力学的に不安定になる外傷です(写真)。出血により生命の危険があります。また、ベッド上から動かすことができず、二次的に肺炎や尿路感染、呼吸状態の悪化、血栓の形成などのリスクがあります。
全身状態が悪ければ、創外固定で一時的な安定性を確保し、状態が安定してくれば早期に金属を用いた骨接合術を行います(写真)。強固な固定を行うことで離床が可能になり、リハビリテーションを行うことで、術後の回復が促進されます。年間で平均20例程度の手術治療を行っています。
開放骨折:
四肢への外力により、骨折を起こすだけでなく、皮膚や筋肉といった軟部組織が損傷し、外界と骨組織が広範囲に交通してしまっている外傷です。骨接合だけでは感染してしまうため、金属で強固な固定を行い、形成外科とコラボレーションし、筋肉組織や皮膚を移植します。年間15例程度の開放骨折の手術加療を行い、その中でも広範囲な軟部組織損傷を伴い、皮弁術(筋肉や皮膚を移植する手術)が必要となる患者の治療は5例程度の割合となっています。
大腿骨骨幹部骨折:
大腿骨が強い力により粉砕し、高度な転位を起こした骨折です。大腿骨が骨折していることでベッドから起き上がることができず、肺炎や血栓症などのリスクが高まります。全身状態をみながら、可能な限り早期に(24時間以内を目指しています)金属を用いた骨接合を行い、早期の離床とリハビリテーションの開始に繋げることで、患者さんの状態の改善につながります。
粉砕を伴う関節内骨折:
軟骨を伴う関節の骨折は解剖学的な正確な整復を必要とします。バラバラになった関節面を丁寧に修復し、金属を用いて固定することで関節を動かすリハビリテーションが可能になり、関節が硬くならないように予防し、機能障害をできるだけ少なくなるように努めています。
偽関節手術などの難治骨折:
骨がつかないことを偽関節といいます。感染により生じた偽関節、残念ながら最初の手術で骨癒合しなかった骨接合術後の偽関節、悪性腫瘍の治療後に癒合しなかった病的骨折、人工関節周囲に生じた骨折など、治療に難渋する骨折の手術を行っています。人工関節周囲骨折は整形外科の専門チームと共同で手術に当たっています。
(文責 籾井健太)