-多施設共同後方視的研究-
筆頭著者:籾井健太 助教
協力施設:九州大学、佐賀県医療センター好生館、福岡整形外科病院、九州労災病院、飯塚病院、九州中央病院、JCHO九州病院、福岡市民病院、浜の町病院、下関市立市民病院、県立宮崎病院、福岡東医療センター
大腿骨転子部骨折の内固定術後、荷重によりラグスクリューに沿ったモーメントが加わり、近位骨片がラグスクリューに沿ってスライディングすることで近位骨片と遠位骨片が接触し、骨癒合が促進されます。しかし、過度のテレスコーピングは術後成績不良に繋がります。本研究では、過度のテレスコーピングの危険因子を明らかにすることを目的としました。
多施設共同にて後ろ向き研究を実施し、対象は2013年9月から2014年12月までの期間、軽微な外傷により大腿骨転子部骨折を受傷した60歳以上の男性19名、女性96名の計115名(平均年齢82.9歳)としました。スライディングヒップスクリューまたは髄内釘を用いた骨接合術を行った後、術後にスライディングした距離を測定しました。スライディング距離が8mm以上をexcessive sliding群(ESG)、8mm未満をnon-ESGとして分類し、2群間比較を行なって術後に過度のテレスコーピングを生じる危険因子を検討しました。
結果として、ESGに50名、non-ESGに65名が分類されました。多変量回帰分析により、女性(p=0.0264)、骨折型としてAO分類のtype A3(p=0.0003)、Tip-Apex distanceが大きい(p=0.0250)、単純X線の正面像・側面像いずれかで整復不良(p=0.0156)であることが、高齢者の大腿骨転子部骨折術後における過度なテレスコーピングの危険因子として同定されました(表1)。よって、手術の際には単純X線の正面像・側面像いずれにおいても良好な整復位と安定性を目指す必要があると結論づけられました。
本研究は以下の医学雑誌に掲載されました。
Risk factors for excessive postoperative sliding of femoral trochanteric fracture in elderly patients: A retrospective multicenter study.
Momii K, Fujiwara T, Mae T, Tokunaga M, Iwasaki T, Shiomoto K, Kubota K, Onizuka T, Miura T, Hamada T, Nakamura T, Itokawa T, Iguchi T, Yamashita A, Kikuchi N, Nakaie K, Matsumoto Y, Nakashima Y.
Injury. 2021 Nov;52(11):3369-3376. doi: 10.1016/j.injury.2021.07.039. Epub 2021 Aug 1.