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GRK5阻害による滑膜炎の抑制

概要:

RAは関節滑膜を首座とする全身性の慢性炎症性疾患です。本邦では最も頻度が高い自己免疫性疾患で、進行すると不可逆性の関節破壊を来します。他方、OAは関節軟骨の変性を首座とし、本邦における推定患者数は約1000万人、潜在患者数は約3000万人とも言われます。いずれの疾患も高齢化に伴い患者数は増加傾向にあり、安全かつ有用な新規治療薬の開発が期待されます。一見異なる両疾患ですが、滑膜炎という共通する病態があり、滑膜炎の増悪にはNFκBという炎症経路が重要な働きをしています。そこで我々はNFκB経路に影響を及ぼすGRK5という因子に着目し、GRK5が滑膜炎の病態に及ぼす影響を評価しました。

具体的内容:

その結果、ヒト炎症滑膜組織においてはGRK5の発現が増加しており、炎症を誘発したヒト滑膜細胞にGRK5阻害剤を投与すると炎症性サイトカインの発現が有意に低下することが分かりました。そこで次にGRK5ノックアウトマウスを用いて、コラーゲン抗体誘発関節炎モデルを作成したところ、GRK5ノックアウトは関節炎の進行を有意に抑制しました。関節炎経過中の血中IL6濃度の上昇も抑制され、組織学的には滑膜炎の増悪が有意に抑制されました。さらにGRK5ノックアウトマウスから採取・培養した線維芽細胞様滑膜細胞と骨髄由来マクロファージを用いた解析から、GRK5阻害は炎症性関節炎の発症と増悪、そのいずれの病態にも関与していることが示唆されました。

本研究から、GRK5は滑膜炎の病態形成に深く関わり、GRK5阻害は滑膜炎・関節炎の発症・増悪を抑制しうる重要な治療ターゲットであると考えられました。(Toya M et al. Scientific Reports 2021)。

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