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C10orf10/DEPPに着目した変形性関節症の病態メカニズム解明

概要:

オートファジー機能低下は、さまざまな加齢性疾患で報告されており、OAにおいても、軟骨変性の原因の一つであると考えられています。しかしながら、軟骨細胞におけるオートファジー機能低下の原因は、未だ十分に解明されていません。近年、FOXO転写因子のターゲット遺伝子であるC10orf10/Decidual protein induced by progesterone(DEPP)が、オートファジー活性化因子であることが報告され、さらに、RNAシークエンスデータにおいて変形性関節症の軟骨細胞で発現が低下している因子でした。そこで我々は、C10orf10/DEPPをオートファジー機能低下の原因因子として注目し、軟骨細胞におけるC10orf10/DEPPの機能、および変形性関節症の病態への関与について解析しました。

具体的内容:

C10orf10/DEPPは軟骨細胞において、飢餓や活性酸素種、低酸素などのストレス因子によって誘導され、ミトコンドリアの選択的オートファジーであるマイトファジーを活性化させることで、軟骨細胞の生存を維持させることが明らかとなりました。また、C10orf10/DEPPノックアウトマウスでは、膝関節に変形性関節症を誘導することにより、野生型マウスと比較して、軟骨変性が増悪することがわかりました。

以上より、C10orf10/DEPPは、軟骨細胞のオートファジー活性化し、細胞生存を維持させる主要なストレス誘導性遺伝子であり、その発現低下によるオートファジー機能低下は、新たな変形性関節症の病態メカニズムであることが示唆されました。C10orf10/DEPPは、変形性関節症患者のオートファジー機能改善を目的とした治療ターゲットとして有望な因子であると考えられました(Kuwahara M et al. The FASEB Journal 2022)。

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