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有限要素解析を用いたDDHの形態的・力学的研究

成人DDH患者の矢状面骨盤傾斜と股関節応力の関連について有限要素モデルを用いて検討した結果、骨盤の後傾に伴い関節軟骨の接触面積は減少し、接触圧力・相当応力は上昇することを報告しました(図1, Kitamura K, Fujii M, et al. Clin Biomech 2020)。また、寛骨臼移動術の骨片移動方向について3次元的シミュレーションを行った結果、側方回転のみでは19%の症例で前上方の被覆不全が残存することがわかりました。術前の前方CE角が37°未満の症例では、前上方の被覆不全が残存しないよう、側方回転に加え、10〜15°の前方回転が必要であることを報告しました(Iwamoto M, Fujii M, et al. J Orthop Sci 2020)。

多くのDDH患者において、立位での機能的骨盤傾斜は臥位やAPPと異なり、関節接触圧力の計算結果に影響することがわかりました。つまり、DDHの病態や関節温存手術に関する研究では、立位での患者固有の骨盤傾斜を考慮する必要があると考えられます(図2, Kitamura K, Fujii M, et al, Clin Orthop Relat Res 2021)。この結果を踏まえて寛骨臼移動術のシミュレーション研究を行ったところ、立位で骨盤が大きく後傾する症例や前上方の被覆が不十分な症例では骨片の側方回転のみでは関節接触圧力は正常化しないことがわかりました。特に術前の前方CE角が32°未満の症例では、側方回転に加え、前方回転の追加が必要であることを報告しました(Kitamura K, Fujii M, et al. Clin Orthop Relat Res 2021)。

図1:骨盤傾斜をFunctional pelvic planeから前後傾10度ずつ動かしたときの寛骨臼軟骨の相当応力変化。成人DDHでは後傾によって応力の上昇を認めるが、正常股関節ではほとんど変わらない。

 

図2:DDHにおいて、立位での接触圧力はAPPや臥位での接触圧力と大きく異なることがある。

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