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股関節の三次元動態解析(健常股及び変形性股関節症)

九州産業大学生命科学部(日垣秀彦教授)との共同研究で、イメージマッチング法を用いた股関節の動態解析を行っています。イメージマッチング法はCTから作成した3次元骨モデルとX線画像を重ね合わせることで、これまで解析不能であった6自由度での関節動態を一連の荷重動作において解析できる方法です(図1)。我々は、生体膝関節および人工膝関節の三次元動態解析が可能なプログラムを開発しており、低侵襲かつ極めて高い精度でしかも効率の良い解析手法を有しており (Hamai S, et al. J Orthop Res 2008)、これを股関節に応用いたしました。屍体股を用いた骨盤と大腿骨の位置・姿勢測定の精度検定では、解析精度はRMS値で並進0.3mm以内、回転0.3度以内であり、膝関節と同等の高い精度を示しました。トレッドミル歩行、椅子からの起立、しゃがみ姿勢から起立、体幹捻り動作の日常生活で行う4動作において、動作に応じた骨盤と大腿骨の協調運動が認められたことを報告いたしました (Hara D, et al. Biomed Res Int 2014)。本研究から得られた日常生活動作時のキネマティクスデータは、病的股関節やTHAのキネマティクスを評価する上で重要な知見を提供するものと思われます。

更に、イメージマッチング法を用いて人工股関節置換術前の変形性股関節症患者さんの三次元動態解析を行いました(図2)。変形性股関節症の股関節動態は先行研究で示した健常股関節の股関節動態とは異なり、各動作、特に深屈曲と回旋動作において、変形性股関節症は骨盤、大腿骨、股関節の協調運動可動域の制限を認めました。大腿骨頭変形、関節裂隙狭小化、軟部組織拘縮のような複数の因子が変形性股関節症の可動域制限に関与していると考えられました。特に椅子からの起立動作としゃがみ姿勢からの起立動作の2動作間で、股関節最大屈曲角において健常股関節では有意差を認めていましたが、変形性股関節症では有意差を認めませんでした。この原因として変形性股関節症患者さんは股関節の可動域制限のため、大腿骨を深屈曲することができず、骨盤をより後傾させることでしゃがみ姿勢を維持する骨盤動態による代償動作が働いたことを明らかにしました (Hara D, et al. Clin Biomech 2016)。変形性股関節症におけるこの様な骨盤、大腿骨、股関節の協調運動の変化、可動域の制限は、THA術後の関節動態にも影響を及ぼしうるため、引き続き研究を続けています。

図1

 

図2

 

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