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変形性股関節症

荷重を支え歩行に重要な役割を担う股関節の軟骨が擦り減る疾患で、歩行時や安静時にも疼痛を生じるようになります。関節温存手術や人工股関節全置換術を行うことで股関節機能の改善を目指します。

 

いわゆる“軟骨がすり減ってしまう”病気で、その“きっかけ”はいろいろとありますが、ここでは最も多い寛骨臼形成不全症に伴う変形性股関節症について説明します。寛骨臼は先に説明しましたように骨頭がはまっているくぼみですが、寛骨臼形成不全症では寛骨臼が骨頭を十分に覆えていないため、徐々に軟骨が障害されてしまいます。X線では、進行に伴い関節の隙間が狭くなり、軟骨がすり減っていることがわかります (図2)。

図2 寛骨臼形成不全症に伴う変形性股関節症のX線変化

 

変形性股関節症に対する治療

もともとの股関節の形態に原因があり、軟骨が障害され関節が進行性に変形する病気ですので、どの段階にあっても根本的に解決するためには手術が必要となります。手術の方法については、なるべく患者さんの生来持っている、生きた関節をうまく働けるようにする方法が最も良いと思っています(関節温存手術)。しかしながら、関節がとても悪くなっている(関節の隙間が減っている)場合には人工股関節全置換術の適応となります。両者は入院期間やリハビリも異なりますので、年齢やお仕事などを考慮した上で、患者さまと相談しながら方法を決めていきます。

寛骨臼移動術(図3)

寛骨臼形成不全症に対する代表的な関節温存手術です。原法は当科の第4代教授、西尾篤人先生が1956年に世界で初めて報告された骨盤骨切り術で、以後術式の改良を重ね、現在は年間30~40例程度行っています。

※年齢および関節症の進行状況によって適応が決まりますので、手術のタイミングがとても大事です。つまり、いつでも(5年後でも10年後でも)できる手術ではありません。寛骨臼形成不全症は若い女性に比較的多く見られますが、結婚や妊娠・出産によってタイミングを逃してしまう方が多いです。関節を温存するタイミングを失うと、若くして人工関節以外の選択がなくなってしまいます。若い女性で股関節に持続する痛みを自覚される方は、早期の専門医の受診を強くお勧めします

図3 寛骨臼形成不全症に対する寛骨臼移動術

 

人工股関節全置換術

変形性股関節症に対する代表的な手術です。寛骨臼移動術とは異なり、どのような変形にも対応できます。日本では年々手術件数が増加している手術で、当科では年間300例以上の人工関節関連の手術を行っています。

人工股関節全置換術は、痛みのない動く関節を再建でき、早期の社会復帰が可能となります。人工関節では長期の耐用性が心配されますが、インプラントの進歩により大きく改善しました。そのため、人工股関節全置換術の対象患者は関節温存先進国である日本においても若年齢化しています。また、人工関節の最大の弱点は脱臼しうるところですが、こちらも手術法の改良やインプラントの進歩により脱臼しにくくなっており、当科では1%を切るところまで改善しています。

人工股関節全置換術は関節温存手術とは異なり関節変形が進行しても手術は可能ですが、まったくタイミングがないわけではありません。あまり家から外出しないなど、活動を抑えることでいたずらに手術を先延ばししていると、いざ手術を受ける時には筋力がかなり落ちてしまっており、術後思うようにリハビリが進まない事があります。 “痛みのせいで”やりたい事ややらなければならない事が出来なくなってくるようであれば、あまり我慢しない事をお勧めします。

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